Tomoyuki Sugimoto Special Interview

スギモトトモユキ スペシャルインタビュー

ミュージックビデオ「Battaki」公開記念!「Black Ocean」「Left」「Battaki」「ヴァルヴァーラの野望(Live版)」「Fei Fei Fei-Propelled (Live版)」などIMERUATの数多くのMVを制作、またライブでVJも担当されているスギモトトモユキさんに突撃インタビュー!「Battaki」の映像制作の裏側までお聞きしました!



Battaki : 即興的に生まれた和声とグルーヴに、Minaがアイヌの伝統曲「バッタキ」をこれまた即興的に歌って2012年に完成した楽曲。ファーストアルバム「Black Ocean」に収録。ライブで最も人気のある曲の一つ。

Question
今回のBattakiはライブ版から素晴らしく進化したと思います。たまたまウチのスタジオに来ていたミュージシャンに見てもらったのですが、「すごい!どうやってるの!?」と大変驚いていました。バッタたちがはかなく倒れていく様子、アイヌとは違う日本家屋という世界観、そういったコンセプトや、またどのような場所・行程で撮影されたのかがとても気になっています。是非教えて下さい!(浜渦)

Answer
まず、もともとライブで使っていた折り紙バッタの映像ですが、これは、アイヌの人たちのバッタキの踊りをYouTubeで見たときに思いついたもの。「バッタキ」ってどういう意味だろう、というところから始まり、この曲のことを色々調べました。
「実写でやるのも面白いかも」ということも、いつ頃かは忘れましたが、ずいぶん前から考えていました。そこへ今回、ミュージックビデオの制作依頼を頂き、「じゃあこの機会にやってみよう」と。この間、頭の中でいろいろと考えていたので、すでに準備は出来ていたとも言えます。古民家のイメージだったり、折り紙風船に乗るバッタ、レコードプレイヤーに引っかかるバッタのカットなどは、もうすでに頭の中にありました。
検証も兼ねて作ったテストムービーをお二人に見ていただき、「実写合成でやる」「ライブ演奏シーンを一部使う」といった方向性を了承してもらって、実際に制作が始まったのが6月。この時点での一番の問題は、イメージに合う撮影場所が見つかるかどうかということでした。いろいろ探し求めた結果、理想的な場所を山梨に見つけ、早速問い合わせ。「撮影で使用したい」と言うと、最初は怪しまれたりもしましたが、趣旨を理解していただきOKが出て、ようやく本格的に動き出したという感じです。
後半、大量のバッタが倒れているシーン。なんとなく「宴のあと」的なイメージで酔って寝てるくらいの感じだったんですが、たまたまこの映像見せた人が「死んでてかわいそう」とか言っていて、「ああ、そう見えたりもするのか」と。でも、タイムシートのメモ書きを改めて見ると、このパートのところには「死屍累々」とか書き殴ってあるので、やっぱり死んでいるのかもしれません。死んでいるヤツもいるのかな?ま、どっちでもいいです。
ちなみに、テレビで流れているライブシーンは、1月11日の渋谷WWWでのライブで撮影したもの。今回のMV、実際に制作が動き出したのは6月からでしたが、1月の時点ですでにそういう話も少し出ていたので、VJをやりながら、このためにひそかに撮っていました。


撮影で使わせていただいた山梨の古民家。撮影は6月9日から3日間。とても雰囲気の良い場所だった。


イントロ部分、折り紙を折るカットの撮影風景。丁寧に折る。ちなみに、撮影時間は8分35秒。




山梨初日。撮影前に、実際の折り紙バッタを置いてみて、あれこれと試行錯誤。


タイムシートと構成表。採用されなかったアイデアも含めて、雑に書き込まれている。
通常の映像制作で使われるコンテ的な役割も。


実制作に入る前に作ったテストムービー。この時点では、まだ撮影場所が決まっていなかった。


従来のライブで使用していたBattaki映像。折り紙バッタの折り方が今回のMVとは少しだけ違っている。
(写真・文 スギモトトモユキ)

Question
IMERUATとのお付き合いのきっかけ、遍歴を教えて下さい!(シアトルライブのインタビューの質問より)

Answer
2012年3月17・18日、FANTASTY ROCK FES 2012(川崎CLUB CITTA')でのライブに、VJとして参加させていただいたのがIMERUATとの最初の仕事でした。きっかけは、浜渦さんとともにFinalFanstasyの音楽を手がけられているスクウェアエニックスのコンポーザー・鈴木光人さんからの紹介です。
川崎でのライブに先立って、光人さんからライブ映像に関して相談を受けていたのですが、「じゃあVJをお願いします」という話の流れになり、お引き受けさせていただきました。
幸いにもその時の仕事をお二人に気に入ってもらえたようで、以降のライブでも引き続きVJとして参加させていただいてます。数えてみたのですが、次のシアトルのライブで7回目になります。
また、「BlackOcean」「Left」のミュージックビデオも制作させていただきました。「BlackOcean」のミュージックビデオは、初めて参加した川崎でのライブの時に作った映像が元になっています。あの時に流した映像はラフなものだったのですが、それを気に入ってもらえた結果、正式なミュージックビデオとして制作を依頼していただけたので、とてもよかったです。

Question
いつもどのようにして楽曲に映像をつけているのでしょうか?ミュージックビデオができあがるまでの課程を教えて下さい!(シアトルライブのインタビュアー&IMERUAT)

Answer
どの曲の場合も、まずは、とにかく楽曲を聞き込んでイメージを掬い取るところからスタートします。『問題を解く』ような最初の工程ですが、曲を聴いてすぐに答えが出るときもあれば、なかなか答えが見つからない時もあります。

ライブ用の映像に関していえば、短期間で多くの楽曲のための映像を作らないといけないという固有の事情があります。(これは、IMERUATのライブに限らず、よくあることです)。なので、まずは楽曲に合った映像を、荒削りでも良いのですばやく作るということを最優先に準備作業を進めていきます。クオリティは、その後、ライブを重ねるごとに少しずつブラッシュアップしていけば良いので。
実際のライブでのステージやお客さんの雰囲気を受けて、映像を全く違うものに作り変えることもあります。たとえば、初めて参加したライブで流した「Battaki」の映像は、今使っている映像とは全く違うものです。

制作に当たっては、それぞれの楽曲について解説したテキストを頂きますが、それ以上に細かい指示が出るといったことはほとんど無く、基本的には任せてもらっています。IMERUATの楽曲は、アイヌの音楽をベースにしたものの他、「ヴァルヴァーラの野望」のように史実をもとにしたもの、あるいは「Left」のようなごくごく個人的なエピソードに基づいたものなど、さまざまな背景を持ったものが多くあるので、毎回頂ける説明テキストはとても参考になります。そういえば、「Left」の場合は、個人的な体験談がもとになっているせいでしょうか、リクエストも割と具体的なものが多かったように思います。ちなみにこの映像では、MINAさんの描いた絵が使われているのですが、映像制作中に追加の絵をお願いしたところ、浜渦さんのデザインした大量のアートワークが一緒に送られてきたりして、面白かったですね。もちろん、それらもたくさん使いました。

こうして制作したライブ用の映像は、あくまでライブでしか見られないものでしが、「BlackOcean」「Battaki」のように、その後、ミュージックビデオとして採用されることもあります。お2人に気に入っていただけた結果、ライブの場を離れてじっくり映像を見てもらえる機会を得られるのは、とても嬉しいことです。


Profile
スギモトトモユキ
音楽・映像制作業
音楽制作活動の傍ら、ミュージックビデオやライブ映像の制作・VJなど、音楽と密接に関わる分野の映像を手がける。2012年よりIMERUATにサポートVJとして参加。また「Black Ocean」「Left」のミュージックビデオを監督。ライブ用映像も制作している。
web http://sugimoto.be



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