The Eve of Mina Ponica's Revolution Report
イメルアライブ「ミナ・ポニーカの革命前夜」レポート

※本タイトルに悪趣味なパロディが感じられるおそれがありますが演出の都合上ご了承下さい

2015.7.25 IMERUATライブ「ミナ・ポニーカの革命前夜」の全貌
(北沢タウンホール)
<公演情報ページはこちら

総勢8名のステージ!

前編
文章、絵:浜渦正志


IMERUATは2011年にスタートして、一定の目標を目指してやってきましたが、早くも12年頃には思っていた形になり、その後はその方向性を磨くことが中心になっておりました。13年の「空想音楽博物館」ではもはや完成した感があり、14年のWWWは「総括の総括」みたいな位置づけ。もう個人的にはそれまでのやり方の延長は不必要に感じていました。何故ならそれらはもはやIMERUATとしての既得権益のようなもの。「待ってました」を繰り返していては、それはIMERUATをやっている意味がないわけです。興行として形にしていく「プロ意識」よりも、ただひたすらやりたいことをやる「究極のアマチュアリズム」をやれるのがIMERUAT。ゲーム音楽専門時代の支持を無視するなどやりたい放題、言うなれば「自己中」のためのユニットだったわけです。さすればIMERUATのファンに対しても喜ばれようとすることもその意味では裏切りになるはずで、「こらからも裏切り続けていって欲しい」と仰っていたファンの方も一定数いたはずなのに、と思うわけです。今回はメッセージ性をひっくり返す、版権曲をゼロにする、スコアを今の観点で書き直すなどなど、それでも結構足りないかもしれないとも思っていたのですが、想定以上に進められたようで、終演後は己の新たな暴挙に対してしばらく呆然としておりました。しかし脳内処理が終わり、立ちこめていた「自分が落とした爆弾の煙」が晴れると、多くの新しい道筋が見えて来て、目論見がほぼど真ん中に決まっていたことを実感しました。「3rdはこれまでのファンに喜んでもらえる曲も…」「CDもチケットもちゃんと売れるように…」なんてイヤらしいことを考えていたんだなぁと。袋叩きに遭っても、圧力を受けても己の手法を曲げず進めてしまって興奮する性癖があったのに、今自由に出来るイメでそれを躊躇するなら「どうかしてるぜ!」としか言いようがありません。「このIMERUAT、天が下に恐れるものいっさいなし!ただ自らの芸術の完璧ならんことを追及するのみ!」といくべきでしょう(by雄山)。でも、共同制作者であるMinaの意見だけは聞きます(笑)。いずれにしても、手応えは最高でした。

全体像などはすっ飛ばして、まずセットリストから!

この日は5変化もしたMina、最初のいでたちは真夏のコート
「おはようハーヴス」+「ヴァルヴァーラの野望」
ライヴは単純に板付きでスタートする予定だったのですが、急遽「足そう」ということになって寸劇をやりました。追われるミナ(ヴァルヴァーラの秘密を知る少女)を追う私(官憲)という、なんとなくの設定です。ここで流れているのは「おはようハーヴス」という新曲。「持っているものを全部見せてみろ」と迫ります。ミナから手渡されたのはムックリ、光るカミナリストラップ、イメるんの設計図(本物)、片栗粉とザラメです。これを何度か揉み拉いて音を鳴らしているうちに「ヴァルヴァーラの野望」が始まります。ヴァル〜の音源の「雪の踏む音」はこの二つを使っており、これをマイクの前で再現してみました。しかもこのザラメはその時のが残っていたので持って来たもの!「学芸会」に拍車をかけました(笑)。片栗粉が問題で、リハのときに粉が舞う舞う…しかも音もよく鳴らない。そのため袋を密封したのですが、一匹氏に「あの粉がふわふわとキレイだった!」と言われ、元にもどしました。しかしやっぱりやりづらい!強く揉むと粉が…。何の話しとんねんという話ですが。

「Far Saa Far」
一発目、新曲です。ライヴ版とCD版は違うのですが、楽曲的にも運命的にも個人的にかなり好きです。歌詞の内容は「槍の雨の下にいる人間がそこから逃げることは格好悪いことなの?」などという感じですが、そこに至ったきっかけが何故か「空耳」。とある撮影地の宿で、従業員が「おはようございまーす」と言ったのを「『ふぁーさふぁー』って聞こえるな」と私が言ったら、コーヒーカップを持って階段を上がっていたMinaのツボに入ってしまい、こぼさないように必死に堪えていた…という出来事がありました。そこから内々でファーサファーブームが起きたのですが、「これ曲名にしたらどうなるか、Far さぁ Far、さぁ遠くへ…!」となり、書きたかったテーマの一つと繋がって歌詞が出来ました。何が役に立つか分からない、この世に無駄なことなんて一つもないのではないか!と思わされました^^

革命戦士らしい衣装は浜渦と何日も練って自作した
「暗殺したい!」
誰彼を!というわけではなく、実行にまで至らない人間の心理をテーマにしています。元気なときや経済的に豊かな時ほど保身的になるし、逆に破滅的にな心情になってしまったら「死ぬくらいならやってしまえ」と周りは言うがそれどころじゃなくなってしまう、中途半端な精神状態の今が一番暗殺に適しているのではないか…だったら今だ!なんて感じの歌詞です。もっともステージでは危険なことを思いっきり口走っていますが、分かりにくかったと思います。何故ならその部分だけ「マイクから外れて聞こえない」演出にしており、読唇術が必要な状態にしたからです(笑)。目隠しをしたり、口の前にバッテンを作ったりで、言いたいことを言うことが憚られる世の中を表現し、そして「声にならない叫びならいくらでも好きなことを言える…!」と、マイクから遠ざかって叫ぶ!「暗殺」というと、もっと重々しいものをイメージされるかもしれませんが、異常にスピーディーで、終始明るいコード進行で、楽しく激しいヴァイオリンソロで…意外とこういうものかもしれません^^ そして最後は官憲に取り囲まれて終わり、という演出でした。何て言っていたか、解った方いらっしゃるでしょうか?打ち上げで演奏者にバラしたら皆さん笑い転げてました。

「6Muk」
インプロヴィゼーション(即興)!いつもは中間部はムックリが延々即興をするのですが、今回は16小節交替で、結城さん(チェロ)、伊藤さん(2ndヴァイオリン)、菊地さん(ヴィオラ)、桑野さん(1stヴァイオリン)にやってもらいました。

「Cirotto」
渡すときにコマが動いてしまったのかなぁ…。まぁあの脆さがトンコリとも言えるのですが。

歌っています
「Leave me alone」
これまではずっとフル生でしたが、原曲のデータを引っ張り出してアレンジし直しました。自分で管理出来る曲というのは、これが出来るから本当に嬉しいです。3年前のシーケンスデータを引っ張り出し、そこにアレンジを加える…感動的です。

「FLAKES TB」
大きく編曲されていたのが分かりましたでしょうか?本当はこれありきで、グルコスは短縮版…というものです。言うなれば書き下ろしをゲームにつかっていただいた、という位置づけで作らせてもらったので、この日はゲーム曲や版権モノが一切無かったということです。革命的だ!…違うか。

「イメルア体操第四 十勝全市町村版」
まず映像を見てもらう…という小休止タイム。この北海道ロケは本当に楽しかった!採算性を無視した活動ができるIMERUATをやめられるわけがない!と思わせてくれる一つです。
十勝全市町村版 YouTube

暴走する体操理念
「イメルア体操第四オーケストラ (30都市制覇計画in下北沢)」
30都市制覇計画(リンク)は8都市まで進んでいたのですが、この日突然「9都市目はここ下北!さぁ皆やるのだ!」ということでお客さんに参加してもらうという暴挙を敢行しました。パンフにも書いてありましたが、そもそもこの体操は「全体主義的な行動が苦手な人」のために作られたはずのもの。後で後方のスタッフに聞きましたら「見た限り全員立ってた」らしいです。任意にならない任意!これこそ全体主義!イメルア体操はまるで儚い革命を夢見る山岳組織の暴走だ…!(笑)

「のみたいな」
体操第四の撮影で冬に十勝を走っていた時に、スイスで飲んだショコラショが飲みたいなぁ…と「のみたいなのみたいな…」と繰り返しているうちに出来た曲です。最後の「ショコラショっしょ?」というのは北海道弁です。このあたりはパンフに細かく書いてありますので是非ご覧下さい!そう言えば、ステージ側では3人くらい「のみたいな、紹興酒」と言ってるのかと思ってたそうです。

「N-Chart」
珍しくいつもよりパーカスのスコアに音符らしきモノを書きました。キまりますねぇ。ブレイクを作ってくれた鈴木光人氏に拍手!みっちゃんありがとう。今更ですが、N-Chartとは「ノーランチャート」を元に考えたものです。CDブックにあるようにそのチャートの内容は全く政治的なものとは変わっていますが。

ぽろろろろろろ旗
「ぽろろろろろろ」
Minaの作曲です。寝ぼけて歌ったものが「みんなが幸せに食べることができますように」なんて歌に発展するとは…しかも「ぽろ」にかけて「ポロ」シャツを作って販売したとか、寝言でも戯言でもこの世に無駄なものなんか一つもないとやはりここでも思わされました。弦はメロを桑野さん…!と思いきや、思いっきり2ndの伊藤さんに弾いてもらえるように書きました。女性的な広がりが欲しかったからです。何でも1stでやればいいというものでもないし、楽譜は演奏者が喜んでもらえるものでないと、それが全体の楽しさにも繋がらないものです。左の「ぽろろろろろろ旗」は所謂「鎌と槌」を「フォークとフライパン」に変えた…というパロディです。

「Battaki」
イヤモニが効きました。一匹氏からスタート!ってのをやってみたかったので。

前日のリハーサル風景

「Imeruat」
これをやりたくて弦カルを呼びました。元々は数本のオブリが絡み合ってるので一度はやりたい!と。リハでMinaが感極まってボロボロ泣きながら歌ってました。私もこの曲は全ての過去作の中で比較にならないくらいよく出来た曲だと思っています。クオリティとか技法とかいう意味ではなく、自分の心のうちを表現して打ち震えることができる…とかそういうところの意味でしょうか。ファンの中にも「この曲が断然!」という方がちらほら。そしてその感想もすごくよく共鳴して感じられるもの。正直、もう一生これ以上の曲はできないと思います。

「Black Ocean」
この曲は年を重ねる毎にヤバイです。最後の感想の三拍子の「強烈な懐かしさ」がもう何とも切なくて…!演奏中の心中をどう表現したらいいか分からないです。

「野を越えて」
衣装チェンジのタイミングで演奏してもらいました。歌無し初披露!

「Giant」
これをやるためだけにライブハウスではなく北沢タウンホールを選びました。にもかかわらずですね…!それは後述します!^^
Giantで衝撃の事件が発生!!

「無題」
アンコール曲ですが、これは実は歌ものです。先にインストを聴いてもらうと「えー、歌になるの?やめて!」となりやすいですが、やめません、すみません。演奏はかなりポップにしましたが、原曲はもうすこししっとりしています。突貫のアレンジで一番ピンとこなかったのにこういうのはウケるみたい…^^;

TeNiOEガールズ登場!
「TeNiOE」
テニオエガールズとの競演!踊っていたのは物販スタッフです^^ この準備が本当に壮絶でした。何度も振付の練習をし、衣装も特注…一夜で終わり?と思った私は、このTeNiOEパフォーマンスを各地でやるべきだと3名に伝えました。それにしても何で黒子やらないかんのだ!せっかくなのでシナリオを大公開!


振付練習をするテニオエガールズTeNiOEのシナリオ
イントロでドジで間抜けなOL、Minaが客席後方から走って登場!持っていたチラシをぶちまけながら歌い出す。すると同僚のアコ(同期・立ち位置左)とカナエ(後輩)が出てきて、チラシを拾い集めるのを手伝う。「ありがとう!」と受け取るも、持って行く先を間違えてどこかへ行ってしまう。「なんだろねー、あの子」と二人がはけようとしたら、またMinaが登場、今度は「イメるん」の返品の山の段ボールを持って出てくる。と、3人による一糸乱れぬ?ダンスがスタート!事務作業をする、化粧をする、あ、お客さん!どうぞ応接室へ!…とMinaだけ間違えて反対の方へ案内しようとして「あ、こっちだった」。吊革を持って疲れて眠りこける3人、Minaだけ目を覚まし、うまくいかない自分に悩む。そこにイメるん(私が黒子)が登場し励ます。喜ぶMina。…も束の間!3番の歌詞「財布を忘れて駅員さんから切符を借りるのそんなに変!?」にアコ、カナエだけでなく、演奏者までが「うん!」と頷く(私は黒子からキーボードに戻るのに必死で参加できず。すぐに弾くため最初は正座しながら)。3人がまとまったダンスをしてMinaの問題は未解決のまま明るく終わる!

振付や脚本には浜渦も参加

セットリスト総括
こうやってみると、本当に「革命」にひっかけた曲と演出だらけだったということが分かるのですが、そもそも革命ネタを知らない方にはあまりピンと来なかったかと思います。一部のお客さんは喜ばれたようですが。ただ、これはきっとじわじわと来るんじゃないかと思います。もう一度全く同じセットリスト、演出でやってみたら、スルメのように効いてくるような。というか、一回だけってのはこの演出に矛盾している?「舞台初日」で終わってしまったような。

音楽的にもそれは言えて、「ツアー初日」だけで終わってしまったような感じでした(笑)。前回までのライブの形態は既に完成していたので、演目も演奏者も履歴のあるものが大半でしたが、やり方はほとんどひっくり返したと言えます。初めて舞台監督、音響、照明を外部招聘したり、スコアの全更新、イヤモニの採用、トラックの分離出力、ダンスの振付、スモークなどなど、裏の部分のほとんど新たに設定してみました。準備時間はあったのに、それ以上に注ぎ込んでいました。やはりまるでポーランドの初ライブ…!あのときも司会者が私たちを招き入れる直前まで進行について二人で言い争ってました(笑)。そして出来ることは全て注ぎ込んで「そりゃ無理があるわなぁ」というのと「あれ、思った以上にできた!?」というのを味わい、「次やろ、次!」と目標をたくさん得て、その後6回のライブを繰り返して「Deperture to Black Ocean」に向かって形にしていったわけです。その後も海外で何度もライヴをやり、そして「空想音楽博物館」「ハッピーニューイメルア」もやりましたが、既にそれらは総括のライヴと位置づけるしかなく、実は割と苦しい思いもあったわけです。でもそこに至ったのは、ポーランドが「前夜」となり「初日」であり、そして「次、次!」と突っ走ることができたからでもあります。今回は二度目のデビューのようなもので、「次、次!」が見えました。それは演奏者にも伝わり、もっとやりこみたい、大きなきっかけになった、と特に新しい人に強く言っていただきました。そしてさらに、初めてIMERUATのささやかな既得権益を破壊することが出来そうだと。そんな原動力を4年ぶりに得られたことは非常に大きい。まさに「前夜」となりました!この前夜はまた一年ほどは続けたいですね。

後編に続く!

髪が風に靡く…
・小ネタ1 開演前の様子。スタジオコロリドのアニメーション監督・デザイナーの新井陽次郎氏によるフライヤーデザインのキャラクターのシルエットを浜渦がパンフレットにデザイン、それをスギモトトモユキ氏が髪を靡かせるようにアニメーション化したものが投影された。3人は一度もやりとりはしていないが、才能がぶつかり合った!(浜渦は大したことはしていない)


500円!
・小ネタ2 B6横サイズ20ページのパンフレット。浜渦がデザイン、文章全て一日で作った。一部の歌詞、イメるんの秘密、体操の全貌、二人の「属性」を薄くデザインした危険なプロフィール、フライヤー全集、Minaの失敗(実話)のマンガなど。もはや作曲家と言えるのだろうか。


すばらしいデザイン!
・小ネタ3 新井陽次郎氏がデザイン、神さやか氏がロゴを担当したフライヤー。お二人をはじめ、スタジオコロリドの面々にもご来場いただきました!終演後に挨拶にいらしてくれたのに、Minaの第一声は「ポスターもらって帰って下さい!あの人に声かけて!」。撤収までの時間がなかったとは言え…失礼しました!8月8日、お詫びにあがります!^^;


長文メールで仲良し
・小ネタ4 浜渦の唯一の作曲家の朋友、平野義久氏も応援に駆けつけて下さいました!二人の大変な企みは間もなく解禁!


マシュマロ・小ネタ5 物販コーナーに山積みにされたイメるん。5人に一人はお持ち帰り!


・小ネタ6 物販コーナーで活躍した浜渦の常にヒラヒラしている長女。ライブの総括も的確で、ブレインと化している。この夏にボカロでの作曲を始めるという。


かわいさの裏に混迷が…!
・小ネタ7 物販ではイメるんにバッグがつけられたが、これが例の「やってもうた」のそれである。原価を計算し間違え…。浜渦がデザインをし終えた後に発覚し、一時は発注取りやめの判断も。浜渦の怒りは相当なものだった。


・小ネタ8 ポロシャツがまさかの一番人気で一枚しか残らなかった!

・小ネタ9 今までとは比較にならないくらいビジュアルに力を入れたにもかかわらず、カメラマンが台風による飛行機の欠航で来られず、代役を準備をし損ない、ロクな画像が残っていないというとんでもない自体に。ここまでの後悔があるだろうか!?もう一度このライブをやるしかなくなった?

後編に続く!